クエスト006 “ヘンテコな服の写真を10枚集めてきてほしい”


タイ・どこかの学園祭

変なTシャツですね~撮っていいですか。と声かけて撮影。
「撮る理由」があると、人に声をかけるハードルが下がっておもしろいなと思った。


ベルギー・アントワープ

ハリボのジャケットかわいい
カツラがひどい。


トルコ・イスタンブール

海外の市場を歩いていると、こういう服に時々出会う。
「日本カルチャー」をモチーフに日本語をレイアウトした、日本製でもなければ、実在する何かやアニメの製品ってわけでもない、アパレル用のデザインとして、その国で生まれ、その国で消費されるための日本Tシャツ。

こういう感じの服、世界中にあるけれど、日本に流通してくることはない。日本にいたら、日本人は買わないし外国人観光客も買わないからだろう。だけど、個人的には、このTシャツからしか発見できないようなアイデアがある気がしてる。日本に輸入されない、海外で魔改造された別バージョンの日本。

日本人は絶対に思いつかない配置、日本に来たことない人がイメージだけで作り上げた日本、ブレードランナーやキル・ビル、ブレットトレインみたいな。

そういうものたちが結構好きで、こういう服たちと出会う時間は、当初の「インスピレーションを得るため」という目的も叶えられたいい探索習慣だった。

「愛命美」と脈絡なく並ぶレイアウトには違和感を感じる。だけどぼくらだって、しまむらや観光地の売店に並ぶ英語デザインTシャツに「LOVE」や「BEAUTIFUL」と書かれてたって、ツッコまないで生きてきた。

こういう「観光地の中のデザイン」っていうものたちが、ファッションの歴史には入ることのなかったデザインたちが、一瞬だけトレンドの主流になるタイミングがいつか来る気がちょっとする。5年後か10年後かはわからないけど。

諸外国のマーケットには、ブランドのブート品(偽物)が無数に売られてる。本物とまったく同じデザインに作られるものから、そんなのあるわけないだろってデザインや組み合わせを取り入れる、偽物であることを隠してもないタイプのものまで。

違法に無数発生するそれらの中のデザインは、サンプリング文化とも共鳴して、時に本家ブランド側に逆輸入されたり、ストリートブランドが行っていた場合は、時を跨いで正規コラボレーションするパターンもある。

ある国の中で魔改造された日本の姿を、逆輸入して、衝突させるようなデザインは、いつかやってみたいなと思う。


カンボジア・シェムリアップ

かの世界遺産・アンコールワットがすぐ近くにあることで有名な街、シェムリアップで撮影。

「ハッピーパンツ」と書かれている張り紙は、それだけ見れば別になにも違和感もない、着心地がいいってことでしょ、くらいの印象だろうけど、カンボジア・シェムリアップではちょっと意味が変わってくる。

ここシェムリアップは、ある飲食店で「ハッピー・メニュー」が選べることから、バックパッカーたちの間で有名な観光地でもあるのだ。

ピザやシェイクを注文する際、ハッピープリーズと言うと、大麻が追加される。そういう、隠れた違法店舗が多くある地、それが、シェムリアップなのだ。

そんな中で目に入る「ハッピーパンツ」は、名前とは裏腹、近寄りがたい、質問するのもやぶさかじゃない。ややパンチは弱いけれど、これもまた、旅先で出会った、正体不明服記録の一つである。


タイ・ロンクルア市場

「失われた愛」が気に入った。


エジプト・カイロ

服がヘンテコっていうか、マネキンと着こなしがヘンテコパターン。キャプテン翼の肩幅。


タイ北部地方

マネキンも服も全部ヘンなパターン。

和服に西洋王冠

おちた生首


タイ・バンコク

最後の一枚は、旅をはじめて一番最初に見かけた服。

ヘンテコな服、って最初は思ったけど、旅先で撮った服たちの写真を見返してみたら、一番やさしくてかわいい服にも見えた。

ゆるい手縫い刺繍。かごにつまった猫たち。
ちらばる魚の骨。CAT。HI。

ヘンだけど、愛ある服。


次回
“スペシャルクエスト”

Text by
松田直己

松田直己(まつだ・なおき)
ファッションデザイナー。吉祥寺在住。イスラエル/京都/静岡出身。好きな女性を振り向かせる為に独学で服作りをはじめ、総数4,000点以上の一点物を発表販売したファッションブランドnisaiを運営。毎年海外旅に出かけてる。
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